日本の「イエ(家)」を一時代に固有の制度慣行ではなく、変容過程において捉えるべきであるという問題関心はすでに70年代から存在した。ただ、当時は「イエ(家)」から脱却した現代家族研究が主流であったため、「イエ(家)」は過去のテーマであり、その変動論が積極的に取上げられてきた訳ではなかった。「イエ(家)」から家族へ、制度から友愛へという変化の先の家族を捉えることが当時の日本社会の中心であった。しかし、「イエ(家)」の先行研究を読み返して見ると、「イエ(家)」を静態的に捉えたと見られる研究にも、社会変化のなかでの「イエ(家)」という問題意識が必ず内包されている。むしろ背景には、農村社会の変化人の移動のなかでの「イエ(家)」の変容という現実がある。この研究では、日本の家族社会学の知識社会学的検討を行うことによって、戦後日本の家族社会において、日本の家族が、いかに前近代的制度または日本の特殊性として捉えられてきたのかを明らかにした。